舶用4サイクルエンジン排気タービン過給機のメンテナンス(動画解説付き)

精緻な部品で構成された過給機について、はじめてのメンテナンスの前に不安を持つ方は多いのではないでしょうか。

ディーゼルエンジンの排気タービン過給機は排気エネルギーを利用し、高速回転によって吸気を圧縮する機械で、単に過給機と呼ぶことが多いです。
過給機の運転状態は、ディーゼルエンジンの燃焼にも大きく影響を与えます。
過給機は高速回転する精緻な部品で構成され、取り扱いには細心の注意が必要となります。

<この記事がおすすめの人>
・はじめての過給機開放をするにあたって、資料を探している
・過給機メンテナンスの流れを知りたい
・メンテナンスを行う上での諸注意について把握しておきたい

今回は動画を参照しながら過給機のメンテナンスについて解説をします。
安全に、スピーディーに作業を円滑に進めるため、しっかりと動画で事前学習しましょう。

動画中のナレーションが英語のため、日本語で解説致しますので、是非ご覧下さい。

舶用4サイクルエンジン排気タービン過給機のメンテナンス作業の全工程とは?

作業は大きく分けて以下の3工程で行われます。

舶用4サイクルエンジン排気タービン過給機のメンテナンス作業の全工程
1.過給機の取外し
2.過給機の整備
3.過給機の組立て

行程①過給機の取外し

ここからは下の動画の解説をしていきます。

(動画は前編と後編があり、まずは前編です)

この作業は以下の工程で行います。

過給機の取外し
1.工具、予備品の準備
2.過給機取外しの準備
3.諸配管、アクセサリー類の取外し
4.過給機の取外し

行程①過給機の取外しの詳しい解説

まずは、工具、予備品の準備をします。
当然ですが、予備品がない場合は開放整備を取りやめましょう。

エンジンを冷まし、冷却水を排出し、潤滑油のポンプを停止します。

開放する部分には組み立てを見据えて、あらかじめマーキングをしておきます。

消音器を外します。チェーンブロックで吊り上げましょう。

取り外す前にタービンローターが手で回ることを確認しましょう。

潤滑油の入口配管を取り外します。中に異物が混入しないようにテープなどで穴をふさいでおきましょう。

冷却水配管も外します。この穴もテープなどでふさぎます。

同様に潤滑油の出口管、冷却水配管も外します。温度計も外します。

排気入り口の断熱材を外し、フランジのボルトを外します。

吸気出口管のボルトも外します。

排気出口管と固定されているボルトを外します。

過給機を下部で固定しているボルトを外します。

この時点で過給機は固定されていないはずなので、ワイヤーを巻き、チェーンブロックで吊り上げましょう。 過給機を作業台へ移動させます。

過給機の回転部は運転中高速回転します。
移動、吊り上げの際は回転部の取り扱いに注意しましょう。

行程②過給機の整備

この作業は以下の工程で行います。

過給機の整備
1.過給機の各部計測
2.過給機の開放
3.過給機の各部清掃

行程②過給機の整備の詳しい解説

各部の隙間をフィラーゲージで計測し、前回計測の値と比較します。

計測が終われば、コンプレッサーハウジングを立たせて、ハウジングを締め付けるボルトをクランプと共に取り外します。

コンプレッサーのハウジングをコンプレッサーのインペラが傷つかないように取り外します。ハウジングからO-ringを取り外します。
硬くて外しにくい場合はプラスチックハンマーで軽く叩きます。

ディフューザは点検や交換の目的以外では取り外さないようにします。

ダイヤルゲージで軸方向と円周方向の隙間を計測します。

インペラの六角ナットを緩めるため、専用工具を取り付けて、タービンローターを固定しておきます。

ここで六角ナットを緩めますが、注意しておきたいのは、ナットが逆ねじだということです。正面から見て時計回りでねじが緩みます。
ナット締め付けの際にも注意しましょう。

ナットはまだ完全に外さず、ベアリングハウジングとタービンハウジングに合マークをしておきます。

タービンハウジングを下にして立たせて、タービン側のボルトをクランプと共に取り外します。

いくつか外せないボルトがあるので、ベアリングハウジングを吊り上げて、作業台から5mmほど浮かせてプラスチックハンマーで下側に叩きます。
ベアリングハウジングを回転させると全てのボルトが外れます。

残されたタービンハウジングからメタルシールガスケットを外します。

木片を間にはさみ、万力でタービンハウジングを固定します。

ここでナットを外します。
コンプレッサーインペラとタービンローターは分離できます。

外れない場合は暖めるのも手ですが、摂氏100度以下にしましょう。
タービンは運転中高速回転する精緻な部品ですので金属製のハンマーで強く叩くと曲がりや損傷の原因となるので避けましょう。

シールプレートのボルトを外します。
プレートを外す場合はジャッキボルトを使用します。
中のO-ringも外します。

シールプレートからシールブッシュを外します。
外したシールブッシュから専用工具でシールリングを外します。

スラストカラーを外します。
外したスラストカラーにはコンプレッサー側のマークをしておきます。

シールプレートを取り外した際に使用したジャッキボルトを使用し、スラストベアリングを抜き出します。

ディスタンスピースを取り外し、そして、タービン側のスラストカラーも取り外し、識別のマークをしておきます。

タービンシャフトを抜き出す前にねじ部には保護のためテープを貼ります。

内部のベアリングを傷つけないよう、慎重にタービンシャフトを抜き出します。

タービンシャフトを抜き出したら、シールリングが固着していないか確認しましょう。専用工具でシールリングを取り外します。

シールドを取り外しますが、実際の作業ではカーボンなどが付着し、外れにくいと思います。カーボンなどの付着物を取り除き、プラスチックハンマーで軽く叩き、取り外します。

コンプレッサー側のスナップリングを専用工具で取り外します。

コンプレッサー側のフロートジャーナルベアリングを外し、表面を点検します。

さらに内側のスナップリングも外します。

ここからは下の動画の解説をしていきます。(動画の後編です)

タービンを洗浄するため適切な保護具と工具を使用しましょう。

タービンシャフトは洗浄液に浸すので、シャフト部分は保護のためテープを貼ります。

洗浄液を溜めた容器にタービンシャフトを浸します。シャフト部分を浸さないように高さを調整します。

同様にタービンハウジングとシールドも洗浄液に浸します。

付着したカーボンが柔らかくなったらブラシを使用して、優しく各部のカーボンを落とします。

カーボンが落ちたら水洗いし、圧縮エアで吹かします。

その他の部品も洗い油(灯油)で洗浄し、圧縮エアで吹かします。
洗浄時に部品が混ざらないようにしましょう。

行程③過給機の組立て

この作業は以下の工程で行います。

過給機の組立て
1.過給機の組立て
2.過給機の取付け
3.配管の取付け

行程③過給機の組立ての詳しい解説

ベアリングハウジングを万力で固定し、組み立て前に各部を圧縮エアで吹かします。異物が混入しないように注意して組み立てましょう。

スナップリングを取り付ける際は角が丸い側をベアリング側に配置します。

スナップリングの合口は下側に向けて取り付けます。

フロートジャーナルベアリングには十分な潤滑油を塗り、挿入します。 
先ほどと同様に、角が丸い側をベアリング側に合わせてスナップリングを取り付けます。

取り付け後、ベアリングには回転するための適度な隙間があることを確認しましょう。

コンプレッサー側も同様にベアリングを取り付けます。

シールリングは形状とサイズを確認し、部位にあったものを使用します。

シールリングを専用工具を使用して、タービンシャフトへ取り付けます。シールリングと溝の隙間が適切かを確認しましょう。

シールドを取り付け、シールリング、タービンシャフトに潤滑油を塗り、シャフトを挿入します。

シールリングの合口は上を向いていることを確認し、タービンシャフトを奥まで押し込みます。

あらかじめ付けたマークにより、スラストカラーの向きを確認し、潤滑油を塗って取り付けます。

スラストベアリングはノックピンがあるので、向きを確認し、潤滑油を塗って取り付けます。

取り付け後、スラストベアリングが回転しないことを確認しましょう。

ディスタンスピースも潤滑油を塗って、取り付けます。

コンプレッサー側のスラストカラーにも潤滑油を塗って取り付けます。

内部のO-ringにグリースを塗ってねじれの無いように取り付けます。

シールブッシュへシールリングを装着し、ここでもシールブッシュの溝とシールリングの隙間を計測しておきます。
計測後、潤滑油を塗ってシールプレートに取り付けます。

矢印が上になるようにシールプレートを取り付け、ボルトを締め付けます。

保護用のねじ部のテープをはがし、潤滑油をタービンシャフトに塗ります。

タービンシャフトを押さえながらコンプレッサーインペラを取り付けます。インペラが落下しないようにナットを仮締めします。
ナットは逆ねじであることに注意しましょう。

タービンハウジングを締め付けるボルトに焼き付き防止材を塗り、タービンシャフトに傷をつけないようにタービンハウジングを取り付けます。
あらかじめ付けたマークに合わせます。

タービンハウジングを回転させ、回転させないと入らないボルトを挿入します。

再び回転させ、マークが合ったらボルトを締め付けます。

ボルトの締め付けが終わったら、ローター固定具を取り付け、インペラのナットを規定トルクで締め付けます。

締め付け後、ローター固定具を取外し、タービンローターがスムーズに回転することを確認しましょう。

タービンローターとタービンハウジングの隙間をダイヤルゲージで計測します。

タービン側の隙間はフィラーゲージで確認します。

コンプレッサーハウジングにO-ringを装着します。
O-ringにはグリースを塗ります。

コンプレッサーハウジングを組み立てます。
吸気入り口管と接続してから締め付けるため、ここではボルトを仮締めにしておきます。

ワイヤーロープを過給機にかけ、吊り上げ、各部品が傷つかないように移動させます。

土台を締め付けるボルトを仮締めし、排気出口管のボルトに焼き付き防止材をスプレーし、この箇所も仮締めします。

排気入り口管のボルトに焼き付き防止材をスプレーし、ガスケットを挿入した後、ボルトを仮締めします。

吸気入り口管のボルトを取り付け、全ての締め付け箇所が正しい位置にあるかどうかを確認します。

全ての締め付け箇所が正しい位置にあることを確認した後、ボルトを締め付けます。

ガスケット挿入を確認し、冷却水配管、潤滑油配管を取り付け、ボルトを締め付けます。

仮締めにしておいたコンプレッサーハウジングの締め付けボルトを締め付け、消音器を装着します。消音器取付け前に、タービンローターがスムーズに回転することを確認しましょう。

エンジンの試運転

各部の閉め忘れがないかチェックし、なければ、冷却水、潤滑油を通します。
特に潤滑油が漏れると運転中高温になった過給機にかかると大変危険です。漏れが無いか確認しましょう。

漏れがないことを確認し、エンジンの試運転を行います。
試運転中は、調音棒で音を、レーザータイプの温度計で温度を、目視で振動、漏れがないか、各部の圧力が正常か、などを確認します。

まとめ

今回は過給機のメンテナンスについて解説をしました。

過給機は高速回転する精緻な部品で構成され、取り扱いには細心の注意が必要です。メンテナンスの手順も複雑なので、作業の前に動画を参照し、過給機メンテナンス作業のイメージを持っておくことをおススメします。

※この記事で使用した画像、動画はYouTubeチャンネル「Marine Tech Maintenance video」からの引用・スクリーンショットしたものを使用しています。